抹茶茶碗について |
お茶は、鎌倉時代に栄西禅師が中国より持ち帰り、日本に広めたと言われています。当初は、薬として使われていたようです。その後、鎌倉時代末期の闘茶(とうちゃ)(お茶を当てるゲーム)という遊びにはじまり、室町時代には書院の茶、室町末期から安土桃山時代にかけて侘び茶が生まれ、利休により茶の湯としての侘び茶が確立されたといわれています。そして利休の侘び茶とともに唐物の茶碗から和物の茶碗へと移り変わることにより、日本の茶陶としての陶磁器が盛んに焼かれるようになったといえます。
茶の湯の基本はお客を一服の茶でもてなすことにあります。ですから茶陶の中で、抹茶茶碗は大切な器のひとつといえます。 抹茶茶碗の形は陶芸初心者でも簡単に作れます。茶碗は掌(たなごころ)である手のひらで水をくむ形であり、器の基本ともいえる形です。それ故に、どこまで作るか、どこでやめるかが大切です。高台ひとつでも木ベラでいじりすぎては良い高台はできません。勢いだけで、ほんのひと削りで良いものもできます。口作りも同じことがいえます。見込みも使う人が広さを感じられるように心がけて作りますが、なかなか上手く作れるものではありません。また他の食器とは違い、茶の湯としての精神性も作り出さなければなりません。
茶の湯では、見立てという言葉があるように茶筅(ちゃせん)ひとつあれば、茶入れはぐい呑み、茶杓(ちゃしゃく)はお好きなさじで、茶碗は深めな鉢で代用するとか、お湯はポットから注ぐもよし、身近にあるもので気楽にお茶を点てて見てはいかがでしょうか。私が陶芸を始めた頃、とある雑誌で陶芸家の加藤陶九郎氏がご自分でお作りになられた茶碗で奥さんと縁側で抹茶を楽しまれている写真がありました。こういうほのぼのとしたお茶の飲み方もあるんだなと思い、私の作陶の原点はどうやらその辺にあるのだと思います。 |